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執筆者の写真藝大工芸科

更新日:2023年3月11日


退任に寄せて




 大きな楠、大きな欅、大きな桜、上野の杜は春夏秋冬いつ歩いていても気持ちがいい。美術学部の正門を入ると都会には珍しく照葉樹林地帯があって緑に囲まれている。私のゼミ室から見える大楠は藝大の教育環境を深く包み込んで、守護神のようにチマチマした教育システムなど関係がないかのように学生や教員を守っているようだ。


 我が家のささやかな自作の坪庭は、私の好きな椿、梅が冬から春にかけて彩りよく咲く。この花たちの蜜をメジロが吸いに来る。メジロは夫婦仲が良いのかつがいで来る。蜜に夢中になっている姿はなんとも愛おしい。目白押しという言葉もメジロが寄せ合っている姿から生まれたらしい。この坪庭を眺めながら楽しく日々制作をしてきた。これからもこの生活は変わることはないだろう。


 昨今、大学の教育方針や環境も時代と共に大きく変化してきた。情報化やグローバル化とやかましい。当然のことといえばそれまでだ、時代に遅れてはいけない。しかし、情報化やグローバル化は科学的なものにとっては重要だが、芸術文化的なものになってくると画一的化の方向に向かってい くのではないかと懸念している。


 教育システムも内容や指導方法なども細かく精査しながら進歩?してきている。教育は方向性を持つから個と矛盾してくる面があり、危険性を孕んでいることも忘れてはいけないと思う。西洋的な考え方と融合しながら、鈴木大拙の言う東洋的な見方の自然、自由になって自分なりの作品、生き方ができるようになりたいものである。一生は一日、1日は一生、これから気持ちをニュートラルにして、制作を続けていきたい。全ては空である。


上原利丸




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